良い素材と出会ったとき、料理人が最初に考えることがあります。どう火を入れるか。どう味をつけるか。どう自分の個性を加えるか。しかし私たちが出店当初から考え続けていたのは、少し違う問いでした。キビまる豚が持つ良さを、いかに損なわずに皿へ届けるか。加えることより、守ることを、調理の出発点にしていました。

出店当初から考え続けた、沖縄キビまる豚の料理法
瀬長島にお店・SEE THE SEA を開く前から、キビまる豚をメニューに入れることは決めていました。しかし「何の料理にするか」は、簡単に答えが出るものではありませんでした。
この豚の最大の特徴は、豚肉では珍しい赤身にサシが入っていることと、脂肪融点30度という、口の中でとける感覚です。遊離アミノ酸が豊富で、保水率が高く、旨みが内側にしっかりと閉じ込められている。つまり、調理の過程でそれを逃がしてしまえば、キビまる豚である意味が半減する。
しゃぶしゃぶにすれば、出汁に旨みが溶け出していく。強火で焼けば、表面から水分が飛んでいく。どの調理法も、この豚の良さを完全には活かしきれない気がしていました。はじめて私がキビまる豚をしゃぶしゃぶ屋さんで食べた際に、シメで食べる出汁の効いたソバ。今まで食べたことのない美味しさ。色んな角度からキビまる豚のことを何ヶ月も考え、試し、また考える。そのくり返しでした。
たどり着いた答えは、ローストポークだった
答えはシンプルなところにありました。ローストポーク。
真空状態でゆっくりと時間をかける低温調理。素材を袋の中に閉じ込め、外へ逃げる場所を作らず、じっくりと熱を入れていく。この調理法を選んだ理由は、理論より先に、直感でした。この豚には、時間をかけるべきだと思ったのです。
考えてみれば、福まる農場は6年以上の歳月をかけてキビまる豚を作り上げました。その積み上げを、高温の熱で一瞬にして変えてしまうことへの、違和感があったのかもしれません。
低温でじっくりと火を入れることで、肉が持つ旨みと水分はそのまま内側にとどまります。口に入れたときにじわりと広がるあの感覚は、素材が本来持っていたものが、そのまま届いている証です。調理法もまた、素材への敬意だと思っています。同様に加工品を扱わせていただいていますポークフランクも「旨みを閉じ込める」「手軽に食べられる」という点では同じです。
ローストポークで届けたい、「美味しい」の先
美味しければそれでいい、という考え方は、正しいと思います。難しいことを知らなくても、食べた瞬間に幸せになれるなら、それが食の本質です。
ただ私たちは、もう一歩先を目指したいと思っています。
瀬長島の海を見ながら食べるローストポークが、旅の記憶として残ること。「あれはなんだったんだろう」と思って調べてくれたとき、この連載に辿り着くこと。読んで、あの一口の理由がわかること。そして沖縄に来るたびに、また食べたいと思ってもらえること。
一皿の料理が、そこまで連れていってくれる。それが私たちの、小さくて大きな願いです。
瀬長島ウミカジテラスでローストポークをお待ちしています
SEE THE SEAは、那覇空港から車で15分の瀬長島ウミカジテラスにあります。
慶良間諸島を見渡すテラス席で、キビまる豚のローストポークをご用意しています。沖縄旅行の最初に立ち寄っても、最後の締めくくりに来ていただいても。帰りのフライトまで少し時間があるとき、ふと思い出したときに。
この連載を読んで興味を持ってくださったなら、ぜひ一口食べてみてください。600年の歴史も、30度という数字も、沖縄の風景も、豚舎さんの明確なこだわりも——きっとその一口に全部入っています。
理屈より先に、体が感じるものがある。それを、瀬長島の海風と一緒に。
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よくある質問
- SEE THE SEAのローストポークの特徴は?
- キビまる豚を真空状態で低温調理したローストポークです。低温でじっくり火を入れることで、脂肪融点30度の脂の旨みと水分をそのまま内側に閉じ込め、素材本来の味わいを最大限に活かしています。
- なぜローストポークという調理法を選んだのですか?
- 福まる農場が6年以上かけて作り上げたキビまる豚の旨みを逃さない調理法を模索した結果です。しゃぶしゃぶや強火焼きでは旨みが流出するため、真空低温調理で素材の良さをそのまま守る方法を選びました。
- SEE THE SEAの場所と営業時間は?
- 沖縄県豊見城市瀬長174-641、瀬長島ウミカジテラス内にあります。那覇空港から車で約15分。営業時間は11:00〜21:00、年中無休です。慶良間諸島を見渡すテラス席でお召し上がりいただけます。