【最終回】たどり着いたのは、ローストポークだった。——素材の良さを、ただ守る。

良い素材と出会ったとき、料理人が最初に考えることがあります。どう火を入れるか。どう味をつけるか。どう自分の個性を加えるか。しかし私たちが出店当初から考え続けていたのは、少し違う問いでした。キビまる豚が持つ良さを、いかに損なわずに皿へ届けるか。加えることより、守ることを、調理の出発点にしていました。

■ 出店当初から、ずっと考えていた

瀬長島にお店・SEE THE SEA を開く前から、キビまる豚をメニューに入れることは決めていました。しかし「何の料理にするか」は、簡単に答えが出るものではありませんでした。

この豚の最大の特徴は、豚肉では珍しい赤身にサシが入っていることと、脂肪融点30度という、口の中でとける感覚です。遊離アミノ酸が豊富で、保水率が高く、旨みが内側にしっかりと閉じ込められている。つまり、調理の過程でそれを逃がしてしまえば、キビまる豚である意味が半減する。

しゃぶしゃぶにすれば、出汁に旨みが溶け出していく。強火で焼けば、表面から水分が飛んでいく。どの調理法も、この豚の良さを完全には活かしきれない気がしていました。はじめて私がキビまる豚をしゃぶしゃぶ屋さんで食べた際に、シメで食べる出汁の効いたソバ。今まで食べたことのない美味しさ。色んな角度からキビまる豚のことを何ヶ月も考え、試し、また考える。そのくり返しでした。

■ たどり着いたのは、ローストポークだった

答えはシンプルなところにありました。ローストポーク。

真空状態でゆっくりと時間をかける低温調理。素材を袋の中に閉じ込め、外へ逃げる場所を作らず、じっくりと熱を入れていく。この調理法を選んだ理由は、理論より先に、直感でした。この豚には、時間をかけるべきだと思ったのです。

考えてみれば、福まる農場は6年以上の歳月をかけてキビまる豚を作り上げました。その積み上げを、高温の熱で一瞬にして変えてしまうことへの、違和感があったのかもしれません。

低温でじっくりと火を入れることで、肉が持つ旨みと水分はそのまま内側にとどまります。口に入れたときにじわりと広がるあの感覚は、素材が本来持っていたものが、そのまま届いている証です。調理法もまた、素材への敬意だと思っています。同様に加工品を扱わせていただいていますポークフランクも「旨みを閉じ込める」「手軽に食べられる」という点では同じです。

■ 「美味しい」の先に、届けたいものがある

美味しければそれでいい、という考え方は、正しいと思います。難しいことを知らなくても、食べた瞬間に幸せになれるなら、それが食の本質です。

ただ私たちは、もう一歩先を目指したいと思っています。

瀬長島の海を見ながら食べるローストポークが、旅の記憶として残ること。「あれはなんだったんだろう」と思って調べてくれたとき、この連載に辿り着くこと。読んで、あの一口の理由がわかること。そして沖縄に来るたびに、また食べたいと思ってもらえること。

一皿の料理が、そこまで連れていってくれる。それが私たちの、小さくて大きな願いです。

■ 瀬長島で、待っています

SEE THE SEAは、那覇空港から車で15分の瀬長島ウミカジテラスにあります。

慶良間諸島を見渡すテラス席で、キビまる豚のローストポークをご用意しています。沖縄旅行の最初に立ち寄っても、最後の締めくくりに来ていただいても。帰りのフライトまで少し時間があるとき、ふと思い出したときに。

この連載を読んで興味を持ってくださったなら、ぜひ一口食べてみてください。600年の歴史も、30度という数字も、沖縄の風景も、豚舎さんの明確なこだわりも——きっとその一口に全部入っています。

理屈より先に、体が感じるものがある。それを、瀬長島の海風と一緒に。

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14時以降のお席は、ご予約もご利用いただけます。

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