沖縄を旅していると、「アグー豚」という文字を目にする機会が多くあります。レストランのメニュー、土産物店の加工品、空港のポスター。沖縄を代表するブランドとして、その名は広く知られています。では、私たちが取り扱う「キビまる豚」とは、何がどう違うのでしょうか。今回はその問いに、正直に答えてみたいと思います。
■ アグーとは何か
諸説ありますが、アグーは約600年前に中国から沖縄に渡ってきた在来種の黒豚という説が一般的です。小柄で、脂身が多く、成長が遅い。生産効率という面では不利な豚ですが、その肉には際立った旨みがあります。
定説によると、うま味成分であるグルタミン酸が一般的な豚肉の約3倍。コレステロールは4分の1。脂身が多いのに体に軽く、甘みがあって臭みが少ない——。長い時間をかけてこの島の風土に馴染んできた豚ならではの、独特の味わい、と言われています。
スーパーや飲食店で目にすることが多いひらがなの「あぐー」はJAおきなわの登録商標で、純血のアグーの雄と西洋豚の雌を掛け合わせた交雑種という説明がされています。また、純血のカタカナ「アグー」と言われているものは、実に様々な説があり、純血だから、とか〇〇だから、など扱われている豚舎さんでも様々なことが言われていて、価格も様々です。
■ キビまる豚は、なぜ白豚なのか
キビまる豚は、アグーの血を持たない白豚です。ランドレース・大ヨークシャー・デュロックという3種を掛け合わせた、LWD三元豚と呼ばれる血統です。
「なぜアグーではないのか」という問いは、自然だと思います。
沖縄で豚といえばアグー。その文化的な重みは確かにあります。でも、キビまる豚、の福まる農場が6年以上の歳月をかけて目指したのは、在来種の復活ではなく、「戦後沖縄に根付いた白豚文化の、現代における最高到達点であり、様々な諸説、憶測に左右されない自分たちで形作る次世代ブランド豚の明確な表現」でした。
同じ沖縄の豚でも、目指している場所が違う。それが、アグーとキビまる豚の最も本質的な違いです。
■ では、肉はどう違うのか
アグーの肉は種類も多く一概には言えませんが、定説によると、脂身が甘く旨みが深い。その代わり、赤身は少なめで、全体的にこっくりとした印象、という表現をされることが多いです。種類が多いため、定説通りではないものもあるかもしれませんが「沖縄の食文化の原点」にある豚の味、と言われることが多いです。
一方、キビまる豚の肉は、豚では珍しく和牛のような細かいサシが入り、噛む力が一般の豚肉の約半分と言われるほどの柔らかさです。さらに、遊離アミノ酸とオレイン酸が豊富で——という話になると少し理屈っぽくなるので、ひとことで言うなら、「最初の一口が、違う」。
その理由を一番シンプルに説明する数字があります。
脂肪が溶ける温度、つまり脂肪融点です。次の記事では、その話をします。
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